平成17年度(第9回)文化庁メディア芸術祭 受賞作品一覧

 現地で見たかった作品もちらほら。「文化庁」って云う冠が何か、お役人仕事を想わせて、例えばマンガの帯にその受賞歴が貼られてても適当に読み流してたけど、こうしてみると結構な意義のある賞のようだ。並んでる作品が面白いし実際。
 気になった作品を幾つか選んでみよう。

 大賞に相応しい作品な気がするねえ。
 時間投影機。とでも訳せばいいのかな? スクリーンに映された映像を、押す強さに従って時間を進める事の出来る装置。陸橋を映した写真が部分的にぐにゃぐにゃと夜になったり夕方になったりで単純な面白さがある。
 面白いには面白いんだけど、これは映す物次第で評価の変わる作品だな。とも思った。紹介映像では風景写真が主で、せいぜいが蕾が花開くまでの映像しか提示出来ていないのが残念。
 それらを踏まえて何となく思い付いたのは氷とか。舟の浮かぶ海とか。同じ風景でもそれが古びて崩壊し廃墟になっていく様とか?(原爆資料館に置いてみるってのはどうでしょう。復興の様子とかさ) 映像によっては実写にするのが難しいけれど(赤ん坊から老人・しゃれこうべまでとか?)、その辺は CG でカバーする事も全然可能だしね……とは云え、これは実写でやってこそ。って気もするなあ。

 片腕無くした傷痍軍人さんみたく人がリード押さえて、胡座の中に抱えたみなしごみたくガキが弦をつま弾く係をしてる乞食ー。みたく妄想はミスチルの let's get truth を聴いててぼんやり浮かべてたもんだけど。
 それはともかく。
 ギターの6弦を一本ずつばらして、それを6人で弾いてみようって試み。そうする事で人間の五本の指じゃ出来ない演奏が出来るはずー。とのこと。人の手じゃ実現出来ない演奏は PC の打ち込みなどで既に出来るので、ある種のパフォーマンスとしてみるべきなのかな。ともかくも、『現状を打破してみよう』と云う思考がとても斬新な方法で噴出してる如何にも芸術めいた傑作だと思う。その発想に敬意を抱いたりするので個人的にスゲ好き。そこから発展して、5メートルの筐体に6人が座り演奏する、つまり、楽団全員が一つの楽器になると云うパフォーマンスも一緒にやっちゃって、アートとしての完成度も非常に高いと思う。
http://www.unsound.com/SSS/guitar.html
 公式サイトにあるサンプル曲が普通に良い曲であるところもポイントが高い。

 吸い込みバーチャルリアリティ。わはは。これすっげー好きだ。
 作品映像の「えええそれ吸い込んじゃうのォ!?」て思っちゃった瞬間にもう惚れちゃったね。吸引に対応して、デバイスも震えて吸い込む感覚をリアルに伝えてきてくれるらしい。吸い込むって事は「直接口に入れる」ってこと。その気持ち悪さや意外性、生理感覚を表現出来るあたりバーチャルリアリティならではって気もして尚のこと好感。だって仮想じゃないと出来ないもん流石に。
 映像中のガキどもの笑顔が印象的。芸術と云うよりもオモチャ感が強いけど、感覚的になればなるほど優れた作品たり得るのがバーチャルリアリティだし、いずれにせよ素晴らしいやね。

 平伏。すげえ。これがプロの仕事かー。
 晴れの日の出来事。みたく静かなBGMと生活音とが鳴る中、真っ白な紙がひとりでに折紙や切り絵を発展させて行く。そこに文字が浮かび上がり、それが何処かの誰かの「こんな家いいな願望」なんだけど、しかしそれが実は「海の見える北向きの大きな窓」だの「玄関をあけたらすぐダイニング」だのと余りにも率直で素直な、云っちゃえば「欲望でぎらぎらしてる妄想」なんだけど、でもそんな臭味は映像中からは全然感じられずにむしろ清々しくてすっげー爽やかな雰囲気。
 観る人間に嫌な感情を全く抱かせない。のに伝えるべき商売の話はばっちり伝えてる。なんかもう、狡ささえ感じる。これがプロの仕事って奴か……!
 また、ひとりでに折紙が進行して行く。てアイデアに更に載っけるように扉が出来たり階段が出来たりチャイムが鳴ったり文字が出て初めて窓だと気付いたり等、様々な意外性がいっそ贅沢なまでにどっさり盛り込まれてて観てて全然退屈しない。見事な手腕だと思う。いや平伏平伏。

 鳴子ハナハルさんがマンガ化を担当されてて。何となく気になった所為か近頃目にする事の多かったアニメが受賞してる。むーん。贈賞コメントからしても、いわゆる他愛ないことを魅力にした作品ってのが解るんだけど。どうしようかなあ。年に一度あるかないかのペースで訪れる「そろそろアニメでも観るべきなのかなあ」期に近いし。観てみようかなあ。